かわち野

かわち野第11集

夏の少女

林 和子

 少女とは、何歳くらいの女の子のことを指すのだろうか。
 この夏休み、駅で知り合いの女の子を見かけた。この子は中学一年生、ついこの間までランドセルを背負う小学生だった。
 朝の見守りサポーターとして小学生の通学路に立つ私に、いつも元気のよい声で挨拶してくれるので、好感度の高い子だった。
 正直なことをいうと、同じ小学六年生女児でも愛想のない子もいるものだから(残念なことにそれが多数派だ)、彼女のポイントは高かったのである。
 そんな子だから、駅で見かけた時も声をかけやすく、
「どこまで行くの?」
 と訊くと、
「難波」
 と返事。冗談で、
「デート?」
 と言ってみたら、なんとこっくりとうなづくではないか。よく見れば、服装もかなりオシャレでお化粧もしているよう。可愛い顔立ちの明るい子だから男の子にモテそうだし、ボーイフレンドがいてもおかしくない。
 青春と呼ぶには少し早いだろうけど、正に夏の少女を見た気がした。

星宿の冒険
春── 少年は森の中を歩いている。
木漏れ日の中、一人ひたすら歩いている。
出逢いと別れを繰り返し。

夏── 少年は恋をする。彼女たちと。
そこに留まれない彼は、疲れながらも歩みを止めず。

秋── 見つけた小屋の中で、少年は書き始める。忘れぬように全てを書き続ける。

冬── 少年の体は凍りつき動かせなくなってゆく。目を閉じて寒さも感じなくなり。

「星宿!」目の前に懐かしい少女がいた。
「夢を見てたんだ。僕は冒険者だった」

 星宿とは、昨年〝アイ・マイ・ミー〟の講座を退会後、急逝された後藤 新治さんの書の雅号です。
 『夏の少女』は、「僕好きやわぁ、これ」と、褒めてくださった原稿、この二編を追悼文とさせていただきました。
 二〇二五年二月