かわち野第九集
脱 皮
コアチュラ
私は今の自分が好き――。
少しずつだけど、物事を前向きに考えられるようになってきている。そんな自分が私は好き。そんな自分が愛おしく思えている。
最近になって、掃除機をかけながら歌っている自分に気がついた。
(何年ぶりかしら、こんな私に出逢えるなんて!)
そう、本来の私は、散歩しながら、家事をしながら、常に歌を口ずさみ、冗談を言ったり、笑ったり。音楽が聞こえたら自然とステップを踏み踊り出すような、陽気で明るい性格そのものだった。
そんな私が、十数年前から理不尽な人間関係に巻きこまれ、圧し潰され……、自分を見失ってしまっていた。
まるで歌を忘れたカナリア。歌は勿論、冗談も言えなくなって、自分がどんどん萎縮していった。
(違う! こんなの私じゃない。もとの私に戻りたい)
と、心がどんなに叫んでも、もがいても、心も体も動かない。硬直したまま、自分を出せなくなってしまっていた。
ところが、後期高齢者の域を目前の最近になって、私の中の自分が、(このままで終わりたくない。昔のような私をとり戻したい)と強く思うようになってきた。自分自身に勇気を奮い立たせ、またある意味開き直り、残りの人生を私らしくありたいと、日々葛藤している。
〝時すでに遅し〟かもしれないけど、これからは色んなことにチャレンジをしていきたい。上手くいかなくてもいい。そこから何かを見つけることができるかもしれない。
人生の最終章を悔いなく楽しく生きる。
新しい自分探しの旅の一歩を、今、踏み出そうとしている。