かわち野第八集
四十年前の見合い
林 和子
20代の前半、初めて見合いをした。
将来に明確な目標もなく、短期的な仕事やアルバイトをして、お金が貯まったら気ままに旅行ばかりしていた頃である。当時は今と違って、仕事も選り好みさえしなければいくらでもあったのだ。
父と母はそんな娘に若干の不安を覚え、この子は早く結婚させた方が良いのでは、とそう考えたかどうかは分からないが、ある日のこと、母が私に見合いを勧めた。
あの頃は親同士のコミュニティがあったようで、その中に適齢期の未婚男女を見合いさせる世話好きなお見合いおばさんがいたのだ。そこから持ちこまれた話である。
私は、いい人なら2、3回会ってもいいかと、軽い気持で会うことにした。
顔合せの場所は地元のホテルのロビーだった。事前に、相手は二男で27歳の勤め人だと聞かされていた。
見合いから数日が経ち、結婚を前提につき合いたいと、母に連絡があったそうだ。決して感じの悪い人ではなかったが、また会いたいとは思えなかった私は、その気持を伝えた。当然その話は流れた。
もし、見合いでない出会い方をしていたら、違う展開をしていたかもしれない。優しそうな人だったと記憶している。
兄も姉も結婚して既に家を出ており、末っ子の私だけが残ったせいか、父も母もあまり干渉はしなかった。自宅住まいのお気楽な娘だったのである。
それから数年後、結婚に至ったのだが、これもまた見合いであった。