かわち野第九集
たったこれだけで
岩井 節子
コロナ禍や自然災害が続き、人々の不安を煽るような示威的行動を繰り返す国のニュースも後を絶たない。何故なんだろうと鬱々した気分で居るとき、ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏の言葉が書かれた「世界で一番貧しい大統領から君へ」(くさばよしみ編)という本をKさんから借りた。
『私達は働いて使い捨てる文明を持ってしまった……。こうして環境を破壊していくんだ。節度を持って暮し、他人のものを奪わず、自分で努力していろんな事を成し遂げる……』という言葉に、うん、うんと頷き『どんな戦争であれ、社会でもっとも弱い人の犠牲で終わる……最低な話しあいは、最高の戦争に勝るんだ』の言葉に希望を感じて、明るい気持ちになれた。
地球の人々が物を大切にする暮しに戻る。政治家は民の命を思っての政治をする。たったこれだけのことが実行されれば、人々はもっと穏やかに暮らせるようになるだろうし、地球の寿命も延びるだろう。
たったこれだけで私の不安は解消され、胸のモヤモヤも晴れるのだ。モヤモヤの理由も、やれば良いことも分かった。後は実行あるのみ。なーんて簡単にいったら良いのになあ|。
そんなことを思っていた二〇二二年二月、ロシアがウクライナに侵攻し、世界中を驚きと不安の渦に巻き込んだ。
そして、二〇二三年。一年経った今も尚ウクライナの人々は戦火に脅かされ続けている。プーチン大統領の言には自分勝手と狂気しか感じられない。
各国の大統領も国家首席も、ホセ・ムヒカ氏に学んだら良い。自分の野望を自国の民の為とすり替えず、民に真の平安をもたらす為に、その賢い頭と指導力を使ってくれたら良いのに……。
ウクライナの人たちのために私たちに何ができるのだろうか。
令和五年、春。ウクライナに一時も早く平和が訪れることを祈る毎日は続いている。