第七集

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かわち野

かわち野第七集 白いゆり 鈴木 幸子  六月の初めに裏山で咲く白い山ゆりを見て、今の私の半分しか生きることができなかった母を思い出した。 昭和二十五年、私が小学校三年の終業式を終えると、父の仕事の都合で一家は福井県の九頭竜川の上流の村に引っ...
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かわち野第七集 成人式とする 坂下 啓子  私に二十歳の三月、縁談話が持ち上がった。「えーっ。なんで私に?」 突然の事で、頭の整理がつかない。相手は遠縁の人(祖父の従兄の息子)で私も二、三回は会った事がある。そう言えば二ヶ月位前、仕事で京都...
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かわち野第七集 着付け 黒江 良子 「自分の長所を言って下さい」「周囲の人と仲良く出来、協調性はあるのではと思います」K大附属病院で面接の時の私の受け答え。 三十五年前、K大附属病院が大々的に定時職員を募集していると友人が誘ってくれた。週に...
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かわち野第七集 春雷 後藤 新治  午後から降り出した雨は音もなく静かに降っていた。ところが夜になると前触れもなく、いきなりバリバリと言う大きな音がして、何ごとぞと思わず身構えるほどの轟音である。雷鳴と気付くには暫くの時間がかかった。これが...